いまだに「生命保険は相続財産に含めなくてもばれませんよ」とか
「ゆうちょ銀行と税務署は管轄が違いますので税務調査には来ませんよ」という
営業担当者の甘い誘惑に乗って虚偽の申告をし、
税務調査で発覚するというお粗末な話をよく聞かされます。
申告を担当する税理士の方も
「保険に入っていませんか、ゆうちょ銀行に口座はありませんか」
と質問はするのですが、
相続人の方に「無い」と言われてしまいますと、それ以上の追求はしにくいというのも事実です。
特に相続税申告だけを単発で請け負った場合などは、
事前の信頼関係が築かれていないためその傾向が強くなります。
ところが、2018年から生命保険会社は
1回の支払金額が100万円を超える保険金・解約返戻金、年間20万円以上の年金等を支払った場合、
死亡による契約者の変更(相続税で言う生命保険契約に関する権利のこと)があった場合
必ず「支払い調書」を提出することになっていますので、
税務署は保険金支払いの事実・名義変更を確実に把握しているのです。
申告書にその事実が反映されていなければ、税務調査に来るのは当り前です。
また、以前は確かに、郵便局と税務署との間の連絡が緊密でなかったため、
架空名義の郵便貯金加入が横行したこともありました。
しかし、現在では、貯金事務センターで完全な名寄せが行われていますから、
郵便貯金の有無(現存調査と言います)はすぐにばれてしまうのです。
つぶれる心配のないゆうちょ銀行に対するお年寄りの信用は絶大ですから、
相続財産に郵便貯金が含まれていないことの方がおかしいのです。
預金限度額は通常貯金1,300万円、定期性貯金1,300万円ですから、
本人名義だけでなく、家族名義による預金に対しても、
いわゆる名義預金として税務署は目を光らせているのです。
そのため、生命保険は財産隠しではなく、
次のようなメリットに着目して利用することをお薦めします。
1. 納税資金として準備する
2. 非課税枠(500万円×法定相続人の数)を利用して手持ちの現金預金を死亡保険に切り替える
3. 遺産分割で揉めないように受取人を指定する(不動産等を相続できない相続人への手当として利用する)
4. 残された配偶者の老後の生活資金を確保する
執筆:田中会計事務所 所長税理士 田中 美光