相続人や一部関係者の勝手な思い込みで財産隠しをしても、必ず見つかってしまい、修正申告で痛い目にあいますよという話しをしてきました。
今回はもっと信じられないことなのですが、税金のプロだと思って相続税の申告を依頼した税理士が必ずしもそうではなく、実は知らない間に税金を多く支払わされているのに気付かないという例です。
最新(2020年)の相続税申告件数は115,267件で税理士数79,293人で割り返すと税理士一人当たり年間約1.45件しか申告をしていないということになります。
実際は相続を得意とする税理士が一人で数十件から数百件の申告をこなしているので年に一度も相続税の申告をしたことが無い税理士(言わば大掛かりな外科手術をしたことが無い医者)がほとんどであるというのが業界の現状です。
相続税ほど同じ税理士資格を持っているプロの間でその力量に差が出る税金はありません。同じ方の相続税申告を10人の税理士に依頼したとすると恐らく全員の回答(納税額)は違ってくるといっても過言ではありません。
なぜこのような事態が起こるのでしょうか。
私の事務所では他の税理士が提出した相続税の申告書を拝見する機会が多いのですが、そのうち80%近い率で間違い・特例の適用ミス・土地の過大評価による相続税額の支払い過ぎが見受けられます。
相続人の皆さんはこの事実を知らされずにプロに頼んだのだから大丈夫だと安心しているのではありませんか。
税務署はこのような間違いに気付いても多く支払い過ぎている場合は何もアクションを起こしません。少な過ぎる場合だけ税務調査に来るのです。
申告書提出後2年以内に税務調査が来なかったからと言って喜んでいる場合ではないのです。
あなたの知らないうちに相続税を多く支払い過ぎているかもしれないのですから。
ではどのような申告の場合がこのような支払いすぎのケースに結びつくのでしょうか。
①土地の現地調査を行わないで机上の計算で土地の評価をしている
②土地に関する資料(測量図・下水道台帳・道路境界明示図・航空写真等)が添付されていない
③被相続人だけでなく相続人の通帳のコピーを3年分要求されなかった
④申告前に土地評価につて詳しい説明がされなかった
等です。
申告書を提出して5年以内であれば「更正の請求」という手続きにより、納め過ぎた相続税が還付される場合がありますので、今一度申告書を点検して見てください。
執筆:田中会計事務所 所長税理士 田中 美光